道楽親父の独り言

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help リーダーに追加 RSS 「東電OL殺人事件」から「ラブホテル進化論」へ(6) ☆ 日本の技術

<<   作成日時 : 2008/03/16 07:03   >>

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 数年前は、中島みゆきが歌うテーマソングにつられてNHKの「プロジェクトX」を続けて見ていた。戦後日本を支えた名もなき男たちの物語というサブタイトルも泣かせた。新橋駅のガード下にたむろするサラリーマンには欠かせられない番組だったのだろう。やらせが発覚して終ったのもさびしい。日本の技術が見直されただけマシだった。失敗にくじけずこつこつカイゼンに努めるのは、昔のドラマ「おしん」を彷彿(ほうふつ)させる。

●あこがれの具現化

 金(きむ)さんによれば、ラブホテルは新しいものを取り入れて人々のあこがれの場としてあったという。セックスをするためにはなくてもよい豪華な機器や設備が備えられたのも利用者のあこがれを具現化するためというのにうなづく始末である。そんなムダを省いてもっと安くしろという考えもあるにせよ、あこがれを刺激して他にはない差別化を図ることによる高級感の演出はモーテルやラブホテルが選んだ道なのだろう。店の名前や外観にも非日常化が反映されたのだろう。ちなみにモーテルのバケバしくて目立つ施設は郊外の目立たぬ場所で広告も大ぴらに宣伝できない業界ゆえの試行錯誤の結果のようだ。

●カイゼンの日本

 新しいものを生み出さずモノマネしかできないというのがかっての日本論であった。それは創作よりも工夫の才にたけているというだけだろう。また新製品の開発は中小企業にまかせ、ある程度の需要が出るとたちまち大量生産を始めて市場のシェアをごっそり占めるのも大手企業の行動パターンだった。それとともにZDやQCサークル、あるいはTQCと呼ばれるカイゼン運動を持ち込み品質向上を図ったのも日本の製造業だった。そこには自動車会社のカンバン方式もあって、在庫を持たない究極の生産方式も生まれて下請け泣かせもあった。

●奇抜さへの特化

 「進化論」第三章のタイトルは「ラブホテルの必須アイテム」である。ここで、金さんのラブホテルの解説が「人々のあこがれが集まる場所」から「セックスを含めた多目的空間」に微妙な変化をみせる。第一章の聞き書きで「ラブホテルの歴史は装置産業、設備産業としての進化の歴史」とか、「何かとコラボレーションすることにおいては天才的な空間」としたことを具体化するからだろう。この章はモーテルが規制される前の「丸出しの時代」がどんなものだったかを振り返り、鏡、べット、装置・仕掛け、セクシャルグッツをかなり詳細にふれている。具体的すぎて呆れるくらいだがゲスの興味をかきたてる章だろう。

●鏡は日本文化の反映か

 おもしろいのは鏡に対する日本文化論である。鏡は連れ込み旅館からあるものだが、極めて低い位置に設けられている。つまり寝る位置にある。金さんは「日本文化は、料理などを見ても視覚的な要素が高く、鏡を見るということで興奮するというのは、日本人の感覚に非常にマッチするのかもしれない」(P67)と書いている。自分たちの姿を確めてセックスするというのも何だか変であるが、ビデオを眺めて興奮する者もいるからそれほど違いはないのだろう。そこからビデオにでも撮られて恐喝されそうでわたしはなじめない気がするのだが・・・。そして「回転べットは鏡と組み合わせることで、その威力を発揮する」といわれても何だか落ち着かない。こんなもので囲まれたらガマでなくとも油汗をかくだろう。ちなみに鏡張りや回転べットは1970年代に禁止されているそうで見かけないわけである。

●健康器具からの応用

 過激さを反映したべッ卜や風呂は健康器具の応用だったというのも意外である。べットは動きで楽しませるメカベットとデザインや形で楽しませるデザインベットに大別されるが、前者は身体障害者のためのエ夫が遊びに転用されたそうだ。また、風呂は身障者に今も好まれるほど広くて使いやすいようだ。この部分は写真や図も挿入されているから興味のある方は自分で買って読まれることをすすめます。ここであまり触れていないのは照明の工夫である。風呂場や寝室の明かりだけでなく、色が変化するのはラブホならではの効果のような気がする。風俗営業の中に「低照度」という定義も加わるように照明のかもし出す刺激というものも無視できないだろう。

●日本の技術

 最近はモノ作りの面で日本の町工場の技術が美化されている。巨大なシステムでなく、手作業的な内容も多い。それはカイゼンの技術なのかもしれない。また、セラミックのように古くから続いた技術の発展でもある。大量生産では消費者の個別ニ一ズに対応できない反映かもしれない。それは「すきま」をフォローするだけでなく、用途の特化なのだろう。ここで技術論を始める気はないが、次のような本は日本の技術を知る参考にはなるだろう。発明や発見とはいえないもののそのエ夫に感心するのはわたしだけだろうか。
 @永井隆『技術屋たちの熱き闘い 組織の壁、開発の試練を突き破れ!』日経ビジネス文庫、2005年
 A足立紀尚『修理 仏像からパイプオルガンまで』中公文庫、2007年
 B井上理津子『はじまりは大阪にあり』ちくま文庫、2007年
 C下野康史『運転 アシモからジャンボジェットまで』集英社文庫、2006年


「OL殺人事件」から「ラブホ進化論」へに関する記事目次

フランス人はなぜキスが好きか 2008/02/26
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「東電OL殺人事件」から「ラブホテル進化論」へ(1)序論  2006/03/04
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「東電OL殺人事件」から「ラブホテル進化論」へ(2)分析の視覚 2008/03/06
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「東電OL殺人事件」から「ラブホテル進化論」へ(3)底辺労働を支える人々 2008/03/07
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コラム:名は体を表すのか ☆言葉の言い換えで解決はしないだろう 2008/03/09
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