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「進化論」の第6章「ラブホテルを利用する」と第7章「ラブホテルを変えた情報誌」は利用者の変化と経営者の戸惑いが出ていて、社会的には負の世界と扱われる二人だけの空間の変遷が表れている。そこにはセックスの場だけでない利用が多数紹介され、利用者のブランド神話も描かれていてこんな利用もあるのかと感心する次第である。わたしの利用経験にしても、携帯電話がこれほど広く普及せずビジネスホテルやロードサイドホテルが発展しない10年以上前には、モーテルは路上に駐車して仮眠して犯罪に合うより確実で安眠できる施設であった。とはいえ、第8章の「「ラブホテルの未来」では利用者の変化に応じてこれから二極化する方向が提示される。そこで今回はいかがわしさの脱皮の具体的側面にふれてこの話題を終わりにします。 ●呼び名の変遷に見えるもの 金さんによればラブホテルという言葉が雑誌に登場したのは1973年ころだそうだ、それ以前は「連れ込み旅館(ホテル)」「同伴旅館(ホテル)」「アベックホテル」とよばれていかがわしさがつきまとった。温泉マークをもじって「さかさクラゲ」ともいわれたのもいかがわしさを示していたのだろう。これらはセックスと結びついていたのは確かである。ラブホテルの後にも「ファッションホテル」とか「デザインホテル」なども使われたが、モーテルを含めてラブホテルに落ち着いている。むしろラブホテルとされて戸惑う始末である。愛情がなくてもセックスはできるわけだし、あえて「ラブ」を冠すること自体がいかがわしさを生むのではないか。これは経営者も世代交代しラブホテルにつきまとうセックスのイメージを払拭したい表れだし、生き残るためにはいかがわしさを取り除くことも欠かせなかったのだろう。 ●郊外のモーテルの脱皮 金さんはふれていないが、かって郊外に氾濫し今では消えてしまったモーテルが現在どのように利用されているかも併せて検討するのも無駄ではないだろう。最近復活しているボーリングは、ブームが去ってからその敷地の広さからディスカウントストアーに転用された。それと同様にモーテルは道路の新設や拡幅とともに新たに活路を見出しカラオケルームやマンションにも転用されている。むろんゴーストタウンと化した地区もある。それは元々立地条件からして人の近寄らない不便な場所にあったからだろう。金さんはラブホテルとモーテルを区別し、モーテルは1970年代の過激なセックス施設から、アメリカ的なロードサイドホテルへの移行を図っているとしている。むろん、今も過激なネオンサインでセックスを漂わせる施設も繁盛しているにせよ、クルマ離れの若者ばかり相手にしていられないのも現実であろう。 ●二極化の方向 金さんの「進化論」の第6章から第8章はどう考えても都市部の施設のような気がする。エステなどの昼間に利用する女性グループのほかにクルマを使えない外国人や高齢者が利用できるのも交通の便を抜きにして語れないだろう。むろん女性も高齢者も外国人もクルマの運転ができる時代であるが、都市部のラブホテルはそういう地の利を生かし、新しい利用を生むのだろう。 (1)陽のラブホテル 金さんは、「女性を喜ばせる場所から二人が楽しむ場所へ」とし、その二人を恋人どうしから同性や高齢者・外国人に拡大した未来像を描いている。人々のあこがれを反映する自由で快適な空間とするのもおもしろい。 ・癒しの空間 こちらはベットや浴室を含めた広い空間を利用する高齢者や他の宿泊施設と同様な広さでありながら安価で利用する外国人を含めた旅行者が視野にあるようだ。風紀や世間体にこだわる個室化していない民宿や高額化したペンションとは別の休憩・宿泊施設としての利用だろう。入れ歯の安定剤や洗浄剤まで心配りしているラブホテルもあるようだ。また、連泊の割引により長期滞在に力を入れる施設もあるという。それとともにデザイナーズホテルという設備や施設の豪華さで異質な空間を演出するホテルもあるそうだ。 ・レディースプラン ラブホテルに限らず女性に受け入れない施設は受け入れられない時代である。定食に耐える亭主を尻目に豪華なランチに女性がグループで出向くのも無視できない。女性どうしのエステ利用もさかんのようだ。こちらは食事とか風呂などの施設の充実により脱皮を図るひとつの方向だろう。むろん、女性の一人利用は今も断られるようだ。 ・二人の空間 道徳心の変化で人前で大っぴらにキスをする時代である。また、二人になれる競合施設も増えた。それでも二人きりでいられる異次元の空間を求めるカップルはこれからも消えることはないだろう。人前で犬や猫のようにセックスをさらすものでないと考えるのは、仮面や化粧を生みだした人間のひとつのてらいではないか。秘めておきたいことは情報公開の時代でも残るだろう。 (2)陰のラブホテル こちらはいかがわしさをラブホテルの原点とみなすもので、建築や装飾の専門家が今も考えているようだ。質を落として風俗にも利用できるというが、わたしはこちらも続くと思う。恋愛とは別に売春という商売を人間が古くから利用してきた歴史を無視できないからだ。むしろ、援助交際といわれる無店舗型で安易な金稼ぎが低年齢層に広がっているとき、組織を離れた利用施設としてのラブホテルはそれなりの存在意義を持つにちがいない(わたしは認めたくないが現実としてそういう面は続いてきたのである)。 ・エロスの館 これは最もわかりやすいラブホテルである。連れ込みホテル、モーテルに流れるセックスのための過激な設備や装置を伴う施設だ。それは互いの感情を高める施設なのだろう。でも、エロスの追及が異常な行為と結びついて、新宿歌舞伎町ラブホテル連続殺人事件(1981年3月から6月に発生した迷宮入りの事件)を思い出させる。 ・風俗と提携した施設 ラブホテルが売春の場となってきただけでなく、安定した客を確保するために積極的に風俗と提携するラブホテルもあるようだ。そこでは部屋代のダンピングや回転率の高まりによる部屋の劣化も生じるようだ。それは一般客の利用を遠ざける自殺行為であるが目先の金にこだわれば魅力的なようだ。 ◎終わりに当たって 2冊の本を取り上げてあれこれ寄り道してきましたが、これ以上続けると興味本位に堕し、わたしの考えを押し付ける気がしてきました。また、愛とかセックスはわたしの手に余る話題で書き続けるのも恥ずかしい面が多々あります。当初は若者や高齢者を含めた性欲、あるいは身体障害者の方々にも触れてみたかったのですがそういうことは本文で紹介した多くのルポルタージュに任せます。むしろ、書き続けることで家族にヘンタイ親父と思われる方がつらくなってきました。そんなわけで、今後も読書録の中で裸体や乳房にふれる機会もあるのでここで終了します。 なお、このテーマにかかわる記事の一覧表を加えますので参考にしてください。ヒマツブシにお付き合い頂いた皆さん、バカじゃないかと目を覆っていた皆さんありがとうございます。 「OL殺人事件」から「ラブホ進化論」へに関する記事目次 【注】補足記事は掲載順とは異なります。 (1)序論 2006/03/04 http://himajin-nobu.at.webry.info/200803/article_5.html ●フランス人はなぜキスが好きか 2008/02/26 http://himajin-nobu.at.webry.info/200802/article_27.html ●「OL殺人事件」で問われたこと 2008/03/18 http://himajin-nobu.at.webry.info/200803/article_17.html (2)分析の視覚 2008/03/06 http://himajin-nobu.at.webry.info/200803/article_8.html ●地域社会の解体と性の教育など 2008/03/15 http://himajin-nobu.at.webry.info/200803/article_14.html (3)底辺労働を支える人々 2008/03/07 http://himajin-nobu.at.webry.info/200803/article_9.html ●名は体を表すのか 2008/03/09 http://himajin-nobu.at.webry.info/200803/article_10.html (4)犯罪の抑止 2008/03/12 http://himajin-nobu.at.webry.info/200803/article_12.html (5)愛情表現の多様性 2008/03/14 http://himajin-nobu.at.webry.info/200803/article_13.html ●「愛の論理」を笑う 2008/03/20 http://himajin-nobu.at.webry.info/200803/article_21.html ●「おきざりにした悲しみは」再論 2008/03/20 http://himajin-nobu.at.webry.info/200803/article_19.html (6)日本の技術 2008/03/16 http://himajin-nobu.at.webry.info/200803/article_15.html (7)いかがわしさからの脱皮 その1 2008/03/19 http://himajin-nobu.at.webry.info/200803/article_18.html (8)いかがわしさからの脱皮 その2 2008/03/20 終わり 【参考】上記の記事はわたしのホームページと関連しています。 ■「たまり場」は帰宅途中で見聞きした世界をまとめて考えたことです。 http://www5f.biglobe.ne.jp/~nobu-yamada/tamari.html ■「本の紹介」は固いものから下劣なものまで種主雑多な読書録です。 http://www5f.biglobe.ne.jp/~nobu-yamada/honmokuji.html ■「風呂めぐり」の第3、4部は風呂の歴史や文化も含めてあれこれ脱線しています。 http://www5f.biglobe.ne.jp/~nobu-yamada/furo.html |
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