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娘にすすめられてイギリスの恋愛小説に手を出した。ジェーン・オースティンのPride and Prejudice は、邦訳が「自負と偏見」(新潮文庫)・「高慢と偏見」(岩波文庫、ちくま文庫、河出文庫)・「プライドと偏見」(映画)の3種ある。内容から夕イトルを付ければ「傲慢と錯覚」だろうが名作ゆえにそれもできないようだ。一冊ですませるために中野好夫訳の「自負と偏見」にした。文庫とはいえ600頁の長編である。 有名な書き出しである。中野好夫さんの訳は次のとおりだ。 《独りもので、金があるといえば、あとはきっと細君をほしがっているにちがいない、というのが、世間一般のいわば公認心理といってもよい。 はじめて近所へ引越してきたばかりで、かんじんの男の気持や考えは、まるっきりわからなくとも、この真理だけは、近所近辺どこの家でも、ちゃんときまった事実のようになっていて、いずれは当然、家(うち)のどの娘かのものになるものと、決めてかかっているのである。》 この作品は1813年に発表されている。日本でいえば江戸時代の文政1O年である。17〜18世紀のイギリスの片田舎を舞台にした恋愛小説のわりに今もテレビや映画になる不思議な作品だ。娘は1995年のBBC製作のテレビドラマを観たようだ。この小説は1940年、2004年、2005年に映画化されている。地位や資産が異なる若者と娘の結びつきをめぐる親や親戚の画策が絡んで紆余曲折のストーリー展開にはらはらさせられる。玉の輿をめざす娘や母親の機微が描かれ、積極的なのは女性であって父親は蚊帳の中というのは古今東西かわらないようだ。結婚は4つあるが、メインになるは貴族の自負を捨てきれない若者とうさん臭さがつきまとう相手に対する娘の偏見の葛藤である。 恋愛がテーマのこの小説でおもしろいのは主人公のエリザベスの冷静で自立的な判断や行動とともに無教養で感情の起伏が激しい自己中心的な母親や未娘の対比である。母親は《頭が悪くて、物知らずで、しかもひどいお天気屋だった。気に入らないことがあると、ひとり勝手に気に病んでいる。なにしろ一生の目的というのが、娘たちをかたづけることであり、楽しみといえば、人を訪ねて世間話に時を消すことだった》(P9)というのも他人事に思えない。自分と子どもを一体化し、自分の経験以上の視野がないのは今に通じるのかもしれない。それを女性が描くのも生々しい。ともあれロマンス小説としてもよく仕上げられた作品である。有名な小説だからこれ以上の下手な解説は不要だろう。 地図を広げ、無地ノートに登場人物の名前や関係を図解すれば、「そこまでしなくても」と娘が呆れる。図解といっても見開きの2頁で地域や家族をグループに分け、その中に名前・愛称・年令・特徴などを入れて、関係する者を矢印で結ぶだけである。自分がわかればいいから細々としたものは省く。読み進むたびに訂正したり追加して行くからきれいではない。皿にきれいに盛りつける日本料理とちがって、材料をごったまぜにして中味が不明なのが欧米料理である。尊称・名称・愛称がごったまぜの欧米小説を読むときは欠かせない作業である。せっかくの連休も天気が悪くて家にこもるしかないから始めたけれど、娘が進行状況を確めるのもうっとうしい。l日で続みきるのも苦行だった。我が家では当分結婚なんて話題は出そうもない。 |
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