道楽親父の独り言

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help リーダーに追加 RSS 風のようにうたが流れていた

<<   作成日時 : 2008/06/22 22:35   >>

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 小田和正作詞・作曲の『風のようにうたが流れていた』に次のようなフレーズがあって思わずうなづいた。
  ことばの意味さえ 分からないままに 覚えた そのうた 口ずさんでいた♪
  出会いも 別れも 知らぬままに 流れるうたをきいていた ♪

 この歌は2004年l0月から12月まで放送された同名のテレビ番組(TBS)の夕イトルであるだけでなく、番組のテーマ曲であり、対談集(宝島社、2005年)の夕イトルだからややこしい。

 読書や作業のついでに何気なく耳を傾け、心地よく感じ、思わずロずさむ《はやり歌》も似たようなものだ。それは祖母のあやし歌だったり、ラジオやテレビだけでなく映画とともに流れてきたり、ともだちに薦められたりして知らぬうちに刷り込まれた。異国の歌さえ含まれるのはそよ風、徴風、強風、突風、烈風、台風を問わず《風のように》流れたからだろう。自覚的や主体的に選り好みしているつもりの歌でも、それを抵抗なく受け入れさせる素地やフイルターや回路が組み込まれている。それをある時に思い出して、そよ風や微風のように通り過ぎた歌を探し回る。

 父母から伝えられた歌謡曲や演歌、学校で教えられた交響曲や歌唱曲、商店街から流れた流行歌、ラジオから飛び込む外国のヒット曲で刷り込まれ、知らぬうちに新しい歌を受け入れるのも不思議である。小田さんの『風のようにうたが流れていた』はそういう歌であるとともにそういう受け入れをしてきた音楽活動を語る対談集である。第1回目に島倉千代子さんが登場するのに驚き、洋楽の受け入れ、赤い鳥とオフコースのライバル意識、グループサウンズやロックとの関わりも意外だった。細い説明は別の機会にまわしたい。

【本論とは関係ない蛇足

 余計なことだが「風のようにうたが流れていた」の最後のフレ一ズについて、わたしがかって愛唱した黒田三郎の詩「喪失」とかかわらせておきたい。興味のない人は読まないでけっこうです。

  なぐさめられて はげまされて そして夢をみた
  面影さえ もう 残らないこの街
  それでも 風のように 歌が流れる ♪

   (小田和正作詞・作曲「風のようにうたが流れていた」)

 グル一プとしての活動期からずっと後の作品で語られることがない黒田三郎の詩に「喪失」がある。

  今はビル街になっている
  交差点に立って
  そこに昔何があったか
  思い出そうとしても
  何ひとつ思い出せない
  どんなお菓子屋や
  どんな事務所や文房具屋が
  どんなに雑多な店舗が
  そこにあったことか
  きっと毎日
  それを見て通ったに違いないのに
  さていま
  この巨大なビルのところに
  何があったろうと思っても
  何ひとつ思い出せない
  〔中略〕
  あるのは巨大なビル
  過去なんてものはもはやどこにもない
  ひとりの通行人の心のなかにさえ
  もはやない
  あるのはただ巨大なビル
  ビル街
   (黒田三郎「喪失」・未刊詩集)

 わたしはこの詩をふるさとに戻るたびに思い出すだけでなく、自分が通り過ぎてきた時代や道楽を振り返ったり、住まいの周りを散策して共感している。でも小田さんの『風のようにうたが流れていた』の「面影さえ もう 残らないこの街 それでも 風のように 歌が流れる♪」にはっとさせられた。モノや心は消えても漂う風はどこかに残るからだ。そういう風が音楽なのかもしれない。

 黒田三郎という詩人は、自分が属した荒地というグループについて「どんな文学運動でも、その過ぎ去ったあとに残るものは個人個人の作品だけだと考える。〔中略〕その個々の成員がすぐれた作品を書かなかったならば運動そのものについていくら力説したところで始まらない」と自著の『現代詩入門』の「荒地論」で論じた。彼は自立した市民でなく、醜態をさらし恨みや妬みを持ち合わせる《小市民》であることを自覚した詩人であった。
 これはフオークやニューミュージックといわれる音楽のジャンルも同じことだろう。泡沫で終ったグループもあったし、今も語り継がれるグループもある。赤い鳥やオフコースもそういう語り継れるグループにちがいない。でも基本は個々の成員にあり、グル一プを解散しても残るのは個々人の作品であり、活動だとわたしは思う。小田さんもオフコースの一員であっただけでなく、小田和正としてひとりで活動をすることで脱皮したのだろう。

【補足】

 オフコースについてはホームページの「フォークのことあれこれ」で、個々の作品とグループについて触れています。
http://www5f.biglobe.ne.jp/~nobu-yamada/houkumokuji.html

 黒田三郎についてはホームページの「30男のつぶやき」や「よりみち」で触れています。
・つぶやき http://www5f.biglobe.ne.jp/~nobu-yamada/tubuyakimokuji.html 
 ・よりみち http://www5f.biglobe.ne.jp/~nobu-yamada/yorimichimokuji.html

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