藤城清治さんの「銀河鉄道の夜」
<<
作成日時 : 2008/06/30 01:15
>>
トラックバック 0 / コメント 0
このところアニメの『銀河鉄道999』ばかり取り上げてきたが、宮沢賢治原作の『銀河鉄道の夜』を思い出す季節が近づいた。そして藤城清治さんの影絵と文を思い出す。子どもが生まれる前に藤城さんの切り絵を元にしたジクソーパズルを何枚も妻と徹夜して仕上げたのも懐かしい。我ケ家にある講談社が1982年に発行した画文集は1993年で28刷だから多くのファンがいるにちがいない。
ご承知のとおりこの物語の登場人物はジョバンニとカンパルネルラという子どもたちだ。藤城さんの絵は横向きの顔だから男の子か女の子か分からないが、大きな目がひときわ印象に残る。技術的なことは分からないが、色鮮やかな背景と登場人物の黒いシルエットの組み合わせが独特の雰囲気を漂わす。これは特異な板画家だった棟方志功(1903年生−1975年没)の肉筆画と極をなす作風のようだ。わたしはどちらの作品を気に入っている。
アポロ宇宙船の月面着陸以後、月や宇宙が子どもの夢の舞台から去り、科学者の功名争いや経済活動のフロンティアとなった。今どき月のうさぎや火星の運河を持ち出せば時代錯誤のボケ親父扱いされる。夜空を仰いで親子で語り合う機会が減っただけでなく、理論が先走りして人間の想像力が萎縮しているのも寂しい。列車が空を走るというのもバカげたことと一笑にふされるのも科学のせいではなく、明るすぎて夜空が眺められない都会に問題があるのだろう。
藤城さんの絵本を我ケ家の子どもはときおり眺めているが、この本はおとなが眺めても飽きない本である。それは原作の宮沢賢治の創作だけでなく、藤城さんの影絵によって想像を膨らませられるからだろう。アインシュタインの相対性理論にはエレベーターと列車が登場するけれど、列車は蒸気機関車のD51に限らず夢を広げるような気がする。夜空を仰ぎ、星に祈りをささげ、明日を夢見るのは決してタワゴトではない。そんな負け惜しみを並べるのも気がひけるこのごろである。
|