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夜の8時を過ぎて外がざわざわするから窓を開けてべランダに出れば、セミが仰向けになってもがいている。10階まで飛んできてバテたのだろうか。へっぴり腰の娘が遠のけば、「人騒がせなセミね」と女房が笑う。昔は娘のようにへっぴり腰だったのに貫禄がついた。「朝早くから騒ぎまわって、ずっこけるのは誰かさんみたい」と付け加えるのがしゃくにさわる。 暑い最中に元気に騒ぎ回っていたセミもこのごろは元気がなくなった。 「ただでさえ暑いのに、あの鳴き声を聞くだけでよけい暑くなるわ」と女房はセミを邪魔者扱いする。そういえば三日前から真休みに入ったわたしに向い、「沼津のセミはせっかちで騒がしい」とセミ扱いするのは、セミにかこつけたあてこすりだろうか。 休みに入ってパソコンいじりが高じて夜更しが続く。昨朝は富士山が見えたばかりに女房を起こしたら、「せっかく安眠していたのに何で起こすの!」と叱られた。そして寝入れば、「まったく勝手なんだから」と娘に愚痴を並べていた。 「好きなことばかりして本も片付けない」と女房が言うのに、「夏休みなんでしよ」と娘が応えたら「この家はバカの集まりね」と嘆いていた。 たくましくなった賢い妻に支えられてぐうたら親子はのんびりしていられる。「暑い最中に買い出しに出るつらさを知っているの」と言われたら反論ができない。セミもとんだ家に飛び込んだものだ。亭主や子どもがセミ扱いされているのを知らずに肋けを求めたセミも哀れである。 |
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